病気について  

病気について

呼吸器内科学が専門とする呼吸器系の病気についてご案内します。

COPD気管支喘息呼吸器感染症肺癌睡眠時無呼吸症候群間質性肺炎急性肺損傷間質性肺炎急性肺損傷

肺癌

肺がんは、肺や気管、気管支の細胞ががん化し、無秩序に増えることにより発生します。肺がんには様々な種類があり、主な種類として腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4種類にわけられます。以前から、小細胞がん以外のがんを非小細胞がんとして区別し化学療法(抗がん剤治療)が行われてきましたが、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤やALK阻害剤、免疫チェックポイント阻害薬(PD-1阻害剤)などの分子標的薬が用いられるようになり、治療は細分化しています。
 当科では以前から化学療法において、積極的に外来治療を推進してきました。特にシスプラチンの投与に関しては、従来3~5日間の点滴が行われてきましたが、当科では他の病院に先駆けて2009年よりシスプラチンの短時間投与(ショートハイドレーション法)を導入して、外来での治療を行ってきました。また、薬物療法センターにおいて、薬剤師外来を併設しており、経口抗がん剤を中心に、外来薬物療法での副作用サポート体制の充実を図っています。
がんの診断・治療について単一科の医師だけでなく、がん医療に携わる専門職が職種を越えて集まり、患者様の症状・状態を把握し、治療方針などを検討するキャンサーボードを定期的に行っており、月1回第1水曜日に呼吸器内科、心臓血管外科・呼吸器外科、臨床腫瘍化、放射線科、病理部、緩和療法科が集まり、肺がんキャンサーボードを開催しております。

 

 

間質性肺炎

肺の間質を首座にする疾患は多岐にわたります。原因不明の特発性間質性肺炎の他、薬剤性肺炎、膠原病に伴う間質性肺炎、過敏性肺臓炎、サルコイドーシス、塵肺など疾患概念はある程度わかっていても詳細な病態は不明です。呼吸器内科の中で肺癌とならんで病理学の重要な分野です。患者さんのより良い診療には詳細な病歴聴取、身体診察、画像検査、肺機能検査、血液検査など内科のあらゆる技術を駆使するやりがいのある領域です。

 

間質性肺炎の原因

原因には、関節リウマチなどの膠原病、粉塵などの慢性的な吸入、薬剤、特殊な感染症など多種多様な原因が知られていますが、原因を特定できない場合は特発性間質性肺炎といいます。

 

間質性肺炎の診断

間質性肺炎の診断のため、先ずは詳細な問診、身体診察に加え、血液検査、肺機能検査、胸部CTなどの比較的低侵襲な検査から実施し、状況に応じて専門的な検査を進めていきます。当科では間質性肺炎の病態解析のため、気管支鏡を用いた経気管支肺生検、気管支肺胞洗浄を積極的に実施しています。また特発性間質性肺炎の確定診断に重要な外科的肺生検についても呼吸器外科との合同カンファランスで慎重に協議して実施しています。当科の取組みとしてin vivo条件下で肺組織を観察可能な共焦点レーザーマイクロスコープ:セルビジオ(Cellvizio)を用いて、間質性肺炎の気管支鏡下光学生検(Optical Biopsy)の研究も行っています。

間質性肺炎とは
 

間質性肺炎の治療

間質性肺炎の治療は基礎疾患の有無や、病理学的分類により、治療介入の意義、方法が異なるため上記検査による正確な確定診断が重要です。当科では特発性肺線維症に対するピルフェニドン、ニンテダニブなどの抗線維化薬や、その他の病型に対するステロイド、免疫抑制薬の投薬に関しても、カンファランスで慎重に協議して治療を進めていきます。

 

肺炎

肺炎とは、主に細菌やウイルスが肺に感染して炎症を起こす病気です。近年増加傾向を示しており、死亡原因の1位は悪性腫瘍、2位は心疾患と変わりませんが、3位が脳血管障害から肺炎になりました。肺炎はどの年代の人にも起こりますが、糖尿病など基礎疾患や高齢者になると重症化しやすいとされ、その予防が大事です。特に肺炎で亡くなる方の96%は高齢者です。そのためインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなどに加えて、口の内を清潔に保つとよいとされます。日常的に行うことで、肺炎の発症率が39%、死亡率が53%低下するとの報告もあります。感染する環境や病原微生物によっていくつかの種類に分けられ、それぞれ症状や治療法などは異なりますが、脱水や酸素不足があると重症化しやすいため、水分が取れなくなったり、呼吸苦が出てきたりしたら、早めに外来を受診するようにしてください。

 

気管支喘息

気管支喘息の有症率は小児で10%前後、成人で8%前後と頻度の高い疾患です。新しい薬剤が開発され改善している方も多いですが、難治性で咳や呼吸困難で困っている方も未だ多い疾患です。当科では的確な診断、治療ができるよう日々努力しています。

 
気管支喘息の原因

気管支喘息の原因

アトピー素因によりアトピー型と非アトピー型に大別します。アトピー型は小児期に発症する事が多く、原因としてダニ、ハウスダストが多いですが、ネコ、イヌ、ハムスターや真菌(カビ)が原因の事もあります。非アトピー型は成人に多く、感染などを契機に認めることが多いです。

 

気管支喘息の治療法

治療は吸入、内服、貼付、注射薬など様々あります。患者さんの状態をみながら選択し治療していきます。また、2015年に保険適応になった中等症から重症の気管支喘息の方に行う、気管支サーモプラスティーという温熱療法も行う事ができます。これが行える施設はまだ少なく、当院はその一つです。この治療に興味がおありの方は、担当医師にご相談ください。

 

慢性閉塞性肺疾患 (COPD)

COPDは、たばこ煙を主とする有毒物質を長期間吸入することによって生じる肺の炎症性疾患です。COPDの患者数は、増加しており、2020年までに全世界の死亡原因の第3位になると予測されています。日本で行われた疫学調査により、40歳以上の成人の8.5%、530万人がCOPDであることが明らかになりました。COPDの約90%は、喫煙が原因です。主な症状は慢性の咳嗽、喀痰と労作時の息切れですが、ゆっくりと進行し、早期発見が難しい病気です。重症になると呼吸不全となり、息苦しさのために身体活動が低下し、風邪などをきっかけに急性増悪を起こし、日常生活の質が低下し、寿命が短くなります。
早期診断には呼吸機能検査が必須です。禁煙と適切な管理により、予防と治療が可能な病気です。

 

 

肺結核

1950年ごろまでは日本では蔓延しておりましたが、ストレプトマイシンなどの抗結核薬の出現にて患者数は急速に減少していきました。ただ、結核は一度体の中に入ると治療をしても体の中に潜んでいるため、抵抗力のない人(お年寄り、栄養不良、長期間の過労、エイズや免疫抑制剤の投与など)では再び活動を始めることがあります。初期の症状は風邪に似ているため、二週間以上の咳や痰、微熱が続くようなら、病院にかかるようにしていください。その際に周りにうつさないように必ずマスクをして受診するようにしてください。

 

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndorome:SAS)は、眠っている時に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりする疾患です。10秒以上息が止まったら無呼吸1回と数えまして、1時間で無呼吸が5回以上ある人は睡眠時無呼吸症候群かもしれません。この疾患の患者さんは、くりかえす無呼吸のせいで脳も体も安眠できず、長く眠ったつもりでも疲れが取れにくくなります。その結果、朝起きられない、昼間に眠い、体がだるいなどの症状が現れます。また、呼吸が止まる前後に大きないびきをかく人が多いのも特徴です。そしてこの病気を長い間放っておくと、高血圧や動脈硬化、糖尿病など、他の病気を悪くすることが知られています。しかし寝ている間の事なので本人が気づくのは難しく、人に指摘されて病院で検査を受けて初めて病気とわかることも珍しくありません。おかしいなと思ったら睡眠時無呼吸症候群の検査について医師にご相談ください。

 

 

禁煙

現代社会で「タバコは体に悪い」ということをまったく知らない人は少ないのではないでしょうか。実際、喫煙者の8割近くは「やめられるならやめたい」と思っているという調査もあります。ではなぜ、禁煙は難しそうなイメージがあるのでしょう?
タバコを吸う時は、タバコの中に含まれるニコチンも吸っています。ニコチンには強い依存性、習慣性があり、「必ずまたニコチンがほしくなる」という薬理作用によってタバコを毎日吸わないと気が済まなくなってしまうのです。現在の医学では、タバコは嗜好品ではなく依存性薬物、喫煙習慣はニコチン依存症という病気として扱われています。病気なので、正しい治療法も知らずにゴリ押しで禁煙するのは確かに難しいでしょう。禁煙外来は正しいタバコのやめ方を習ったり、補助薬の処方を受けるところです。病気の治療ですから、医療保険も使えます。ニコチン依存症を治したい患者さんはぜひ、禁煙外来を予約してください。