臨床研究  

研究内容

 

研究分野

1.  肺がん化学療法
2.  呼吸器内視鏡検査(気管支鏡検査、局所麻酔下胸腔鏡検査)
3.  間質性肺炎
4.  アレルギー分野
5.  COPDの研究



1.  肺がん化学療法

 

化学療法に伴う有害事象のリスク因子の検索および対処法の探索を目的として、主に前向きの観察研究を行っています。またCJLSGやNELSGの臨床研究グループで行う多施設共同の臨床試験に参加し、共同研究を行っております。

2.  呼吸器内視鏡検査(気管支鏡検査、局所麻酔下胸腔鏡検査)

 

当科で実施している呼吸器内視鏡検査は年間400件(H25年度)と症例数も非常に豊富で、良悪性問わず多くの疾患を経験しています。当科では複数名の医師、看護師、放射線技師が協力して検査に参加し、術者を中心としたチーム体制で検査にあたっています。

・気管支鏡検査
気管支腔内超音波断層法(EBUS)、蛍光気管支鏡,NBI装置などを積極的に併用することで、従来法に比べて診断率が飛躍的に向上し、国内外でその診断率に関して高い評価を得ています。現在、間質性肺炎の低侵襲診断を目的として共焦点レーザーマイクロスコープ (Cellvizio) による気管支鏡下光学生検 (Optical Biopsy) の臨床研究、縦隔リンパ節に対するEBUS-TBNA検体のフローサイトメトリー解析など複数の臨床研究を実施しています。

3.  間質性肺炎

当科では間質性肺炎の新しい診断法について研究を進めています。間質性肺炎は呼吸器の疾患の中でも代表的な難治性疾患であり近年その数が増えています。間質性肺炎は経過も治療法も異なる複数の疾患を含んだ疾患群で、この疾患の診断には病理検査が極めて重要です。悪性腫瘍、結核などと異なりいくつかの病理所見の組み合わせパターンで分類診断をしますので、生検組織も全身麻酔下に外科的胸腔鏡を用いて大きく取ることが必要です(外科的生検)。しかしこれを全ての症例で行うことは困難で、特に高齢者では全身麻酔を必要とする外科的肺生検は施行困難です。高齢者の患者さんの多い間質性肺炎では、より侵襲の少ない方法での診断が必要であることは間違いありません。

1 高齢者間質性肺炎の初診時HRCT所見と予後に関する前向き観察研究 UMIN000012933 藤田医科大学倫理委員会承認 13 – 196
私達は2005年4月~2012年4月の7年間に当院を受診された75歳以上の間質性肺炎の患者さんを初診時のCT所見(高解像度CT)による予後(寿命)を院内のデータを元に後ろ向きに解析しました。その結果、蜂巣肺といわれる所見を中心に初診でのCT所見で予後が異なる可能性を見いだしました(臨床放射線59巻1号p123-130, 2014)。しかしこれは過去のデータを元にしているので十分な解析ができたとはいえません。そこで現在、高齢の患者さんで初診でのCT所見を解析しその後の肺機能や呼吸困難度の変化などを前向きに(今後あらかじめ決めておいた検査データをもれなく記録します)調査する観察研究を行っています。これによって高齢で外科的な検査のできない患者さんも治療の必要性などの方針をたてるのに役立つと考えています。

2 間質性肺炎を含むびまん性肺疾患における気管支鏡下プローブ型共焦点レーザー顕微鏡による病理診断 UMIN 000018518
プローブ型共焦点レーザー顕微鏡(pCLE)は内視鏡の吸引チャンネルを通して挿入できる画期的な新技術で消化器内科では広く使用されつつあります。生体内の組織に直接あてることで顕微鏡レベルの構造を蛍光で観察することができます。肺にはもともとエラスチン(弾性線維)と肺胞マクロファージという自家蛍光を発する(蛍光物質で染めなくてももともと特定の光を当てると発色する)組織、細胞が存在しており正常肺、病気の肺で広く観察することで組織を切り取らなくても病理診断ができる可能性が期待されています。私達はこれを、間質性肺炎をはじめとする多くのびまん性肺疾患に応用して新しい診断技術の開発に取り組んでいます。

4.  アレルギー分野

 

当科では長年気管支喘息の様々な研究を行っており、患者さんに還元できるよう努力しております。代表的研究としては

1.アスピリン喘息の臨床背景の検討
当科では長年アスピリン喘息の診断、治療で患者さんを診療しており、NSAIDs (解熱鎮痛剤) の過敏性の消失の有無、臨床背景 (重症度、治療薬、肺機能、鼻合併症など) を蓄積し変化を検討しています。

2.気管支喘息の気道過敏性の経年的変化
当科では積極的に気管支喘息の方にはメサコリンによる気道過敏性試験を行ってきました。10年、20年という単位でみると、徐々に当科に初診で来院する患者さんの気道過敏性試験は改善してきています。現在データをまとめ論文化する段階に入っていますが、引き続き、当科としては経過をみていく予定です。

3.アスピリン喘息の診断
現在、アスピリン喘息の診断は内服試験が最も良いとされていて、当科でも内服試験で診断しています。ただし、発作をある程度誘発する試験であり、リスクもあります。当科ではin vitroでアスピリン喘息の診断ができないか2000年代から検討し、接着分子であるCD11bを用いてヒトにおける採血でアスピリン喘息の診断法を2013年論文化しました。これによると感度、得意度はそれぞれ約96%前後とかなり鋭敏な検査法あると考えています。

4.iPS細胞の気管支喘息の応用に関して
気管支喘息は新しい薬剤が日々開発され死亡率は年々減少しています。しかし、未だ、様々な薬剤を使用してもコントロールが不十分な方も多くいます。重症喘息も含め気管支喘息の根絶を目標に、当科ではiPSを用いた研究を行っています。すなわち、マウスから採血し、単球を分離します。それをiPS化し増殖、培養し再度、単球にもどし、それを制御性樹状細胞とし、ついで制御性T細胞の誘導を行います。そして、 喘息疾患モデルマウスを用いて、実際に喘息症状が抑制されるか細胞移植実験を行う事を目指して研究しています。現在のところは、マウスからの純粋な単球の分離、iPS化まで進んでおり、今後も少しずつ研究予定です。

5.  COPDの研究

 

COPDと診断するためには呼吸機能検査が必須で、閉塞性障害を認めることが第一の診断基準となっています。また、COPDの治療は早期から治療をすることが効果的なため、症状がでないか軽微なうちに呼吸機能検査を指標としてCOPDを早期発見することが非常に重要です。
早期発見するために、これまで健康診断に呼吸機能検査を取り入れる試みがすでに報告されていますが、それらは健診会場を用いた集団健診において呼吸機能検査を追加導入した試験でした。しかし実際の健診の多くは、かかりつけのお医者さん(一般開業医さん)が各施設で担っているのが実態です。
COPDには高血圧や糖尿病など様々な生活習慣病が併存することが知られており、日頃から生活習慣病のためにかかりつけを受診する患者さんたちに、相当数のCOPD患者さんが隠れている可能性が高いと予想されます。
これらから、かかりつけのお医者さんでの呼吸機能検査が重要と考えられますが、実際の現場では呼吸機能検査の普及率が約10%と低いのが現状であります。
そこで2014年から当大学病院と地元の先生方で『豊明COPD研究会』を立ち上げ、COPDの早期発見と早期治療に日々努力しています。